ミュージカル サンセット大通り〜狂気と悲哀〜

こんにちは、いかがお過ごしですか?
舞台をはじめ、様々な、本当に様々な業界が激震を受けることをどうにも考えずにはいられません。
そんな中、初日を遅らせ楽日を早めて上演された「サンセット大通り」を観てきました。
年末頃に映画を観て、ミュージカル自体は初見です。
今回、手持ちチケットが後半に偏っていた為あわてて追加したこともあり、松下&安蘭さんペアが5回・平方&濵田さんペアが1回となりました。なので感想も偏ってるかもしれません。


まずダブルキャストで驚いたことが、「ここまでストーリーの印象が変わってくるのか!」ということでした。
平方さんのジョーは映画の印象に近く、利用できるものを利用することに躊躇がない。のし上がろう!というよりも、とりあえず今をどうにかする事を考えてる…というイメージ。また、男らしく気性が荒かったです。
それに対して松下さんのジョーは、まだ未来を夢みる若造で、口や態度では色々と言いつつ表情で心が隠せてない。自分はこれでいいのか?と常に迷ってるような印象でした。周りに流され翻弄され、でも情の深さが見えるから「仕方ないよね…」と思えてしまう。
わたしは、平方ジョー(&映画)に対しては「自業自得だよ!!!!」と思いました(笑)
松下ジョーは同情の方が強い……

そしてノーマ。
安蘭さんのノーマでとにかく記憶に残ってるのが、年齢を自由自在に操っているようなあの声音。登場シーンは確実に「屋敷に引き籠もり過去の栄光に思いを馳せる孤独な50歳」でした。なのに、ジョーに思いを寄せるごとに若さを吸い取るかのように若返り乙女になっていく。「いじわるしないで」や「新年おめでとう、ダーリン…」の可憐さに惚れ惚れしました。
濵田さんのノーマはまさに「少女のまま大人になれない50歳」でしたね。安蘭ノーマが「横暴」ならば濵田ノーマは「わがまま」って感じでした。

マックスへの接し方が全く違うのもすごかった!山路さん、演技プランが全く変わるから大変だったことでしょう。感服……
安蘭ノーマには徹底的にあしらわれ、無碍にされ、最後の最後やっと正気を失ったノーマと目が合う。その時のマックスの感情が何度観ても泣けた。
観てて思ったんですが、恐らくノーマとマックスが目を合わせて会話(というか、そもそも会話らしい会話がなかったんだけど…)するのって、ラストの大階段だけだと思うんですよね。とてもエモい。
濵田ノーマは常に少女を見守るように寄り添ってた。過保護。こちらのマックスは「黒幕」と言われても納得するような演技でした。少女のまま屋敷に閉じ込め、現実から目を逸らさせ、まさに籠の中の鳥のように生活してる。
ただ私自身は、マックスは意図的にそうしてた訳ではない気がします。責任を負い傍にいたら、そうなっていった……みたいな。
サンセット大通りは通して「歯車のかけ違い」の物語だと思いましたね。

ノーマ邸でのラストですが、ベティとジョーのやり取りにも違いを感じました。
松下ジョーは「俺は成功してやるぜ」って意気込みと、現実と、自分の実力と、なかなか折り合いがつけれず悩んで最終的にすべて捨てる覚悟をもつ。それをベティも察して「あなたをこれ以上見てられないわ」なんだと思います。
自分を突き放すための乱暴な言葉だと分かってるんだと思う。ジョーとベディは最後まで分かりあったまま別れてて、それに一人だけ気づかないノーマがより滑稽に映る。ひとり高笑いをするノーマ、もう常に狂気の中にいるからジョーの表情も最後の最後にやっと読み取れる。(それまでもジョーの表情を見てたら気づく場面がたくさんあると思うんですけどね…)
そこからの、恋する乙女が大スターに戻る様が見事!

平方ジョーは、「俺はどうしろって言うんだ!」という怒りをベティにぶつけてる気がする。いや、自業自得だよ!!
だから喧嘩別れの印象でした。ベティの「これ以上見てられない」も「もう付き合いきれない」みたいな怒りを感じた。全体的に平方ジョーはベティと闘ってるイメージです。脚本家としてメラメラしてるんだなあ…
ジョーのプライドの高さが、二人違う形で表れてて面白かったです。

そして推しのアーティは…アーティはもう…………とにかく可哀想という気持ちしかないので……一番被害者じゃん………………
どうにか競走馬の映画(※推しの脳内妄想)で大成功してくれ、と願うばかりです。
あんなに緑の多い場所でブランコとハンモックを夢みて!仕事をがんばってたのに!!
ただ、双眼鏡でアーティを追ってて思ったけど、アーティって頭は良いし聡いし色んなものに気づいてる(本人達が全く自覚もしてない頃から。)けど、人を信じやすいというか…ある意味事なかれ主義なのか……?
親友も婚約者もどっちも失いたくなかった結果、両方喪う……という。
そこで受け入れちゃうからさあ!!みたいなところが、ところどころ。
いやでも本当に可哀想すぎる!!!!!!!!!!

しかし推しの恋愛演技はとても良いものでした。
恋人できたんだ〜♪るん♪みたいな推しを観たのが久しぶりなので、こんな可愛い演技するんだ……となんか感激したりしてました(笑)
ちょっと腰に回す手やキスがぎこちないところも、ふふってなったり。また恋愛ものの作品がきたら嬉しいな〜〜〜

本当に素敵な1週間を過ごさせて頂きました。
国際フォーラムでの生オケ、たまらんですね。もうお衣装もライティングもセットもオケも演者さんもすべてが豪華で「お、お値段以上…」と思わずにはいられなかった。
私は二幕前の演奏で、目を薄くつぶってライティングを感じながら音楽にひたるのが毎回好きでした。

またの公演があることを願って。
すべての関係者様に、推しに、最大の感謝を述べさせて頂きます。本当に本当にありがとうございました!